飲食テック編集部
2026年5月23日 07:13
課題・背景
百貨店業界、特に食品部門では、生鮮品や惣菜など賞味期限が短い商品の取り扱いが多く、需要予測の難しさから「食品ロス」が長年の課題です。過剰な発注は廃棄コスト増大に直結し経営を圧迫するだけでなく、環境負荷も高めます。一方で、需要を見誤れば欠品による機会損失も発生し、顧客満足度低下にも繋がります。このバランスの難しい課題解決が喫緊のテーマでした。
導入内容・技術
大丸松坂屋百貨店は、この課題に対し、大丸東京店のベーカリー部門において、2022年8月から「AI需要予測サービス」を本格稼働させました。本サービスはコニカミノルタジャパンが提供する「AIsee(アイシー)」であり、データサイエンティストを必要としない設計が特徴です。過去の販売実績データに加え、気象データやイベントデータなどの外部要因も取り込み、AIが食品の需要を高い精度で予測する仕組みです。この予測結果を基に、発注量や仕入れ計画を最適化し、食品ロスの削減を目指しました。
効果・成果
導入の結果、大丸東京店のベーカリー部門において、2022年度の食品ロスを「最大7%削減」という顕著な成果を達成しました。これは、パンや惣菜など日配品における廃棄コストの直接的な削減に繋がり、当該部門の利益率改善に貢献しています。AIによる精度の高い需要予測は、過剰な仕入れを抑制し廃棄量を減らすだけでなく、品切れによる機会損失の抑制にも寄与し、顧客満足度の維持にも繋がると考えられます。
考察・今後の展望
この事例は、AIが単なる効率化ツールに留まらず、企業の経営戦略全体に大きなインパクトを与える可能性を示しています。今後は、POS、CRM、ERP/SCMといった基幹システムに加え、気象、イベント、SNSトレンド、競合情報などの外部データとAIを連携させることで、より精度の高い予測と、データエコシステムの構築が百貨店ビジネスの成長を加速させるでしょう。AIの適用範囲を広げることで、持続的な成長と競争優位性を確立できると考察されます。
現場への示唆
中小規模の店舗やオーナーにとって、AI需要予測システムの導入はコストや専門知識の面でハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、本事例のAIサービスが「データサイエンティストを必要としない」設計であるように、専門人材が不要なサービスも登場しています。まずは既存のPOSデータや販売実績を詳細に分析し、曜日別・時間帯別・イベント時の売上傾向を把握することから始められます。天気予報と過去の売上データを紐付けて簡単な予測を試みる、SaaS型の安価な需要予測ツールを検討するなど、スモールスタートも可能です。AI導入は発注業務の効率化や廃棄作業の減少に繋がり、現場スタッフはより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
大丸東京店ベーカリー、AI需要予測で食品ロス7%削減
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